自転車の構造、機能、性能等に関する問題は主にJIS D9301(2019)に基づいて出題されています。このページでは、過去の出題事例から試験用の知識として必要と思われる事項を抜粋、編集したものを記載します。正確な記載は原典を参照ください。

先鋭部

通常の乗車走行及び取扱操作で人体に危害を及ぼすおそれがある鋭い角,とがり,ばり,かえりなどは,面取り,潰す,丸めるなどの方法で処理しなければならない。また,ブレーキレバー,スタンド,セイフティフックなどの端部は,丸め加工を施すか,又は容易に離脱しないキャップなどで覆わなければならない。

突起物

使用者への刺し傷の危険を引き起こすフレームのパイプ及び剛性のある構成部品(例えば,ハンドル,レバー)の露出した突起物は,保護しなければならない。端部保護のための寸法及び形状は,人体の損傷を避けるために適切でなければならない。刺し傷の危険を引き起こすねじ類は,おねじが締付け相手部分(ナット面など)から,ねじの外径以上に長く突き出してはならない。
なお,機能を発揮させるために必要な構造又は外観上の突起,チェーン引きなど調整を必要とするもの,及びキャップなどで覆われているものは,この規定を適用しない。

ワイヤ

ブレーキワイヤ,ディレーラワイヤ,(照明装置用)リモコンワイヤなどのインナの末端が露出しているものは,ほつれないようにワイヤキャップなどによって処置し,ワイヤキャップなどは20 Nの離脱力に耐えなければならない。

ねじの安全性

サスペンション機構,ダイナモ,制動装置及びどろよけをフレーム体又は前ホークに取り付けるためのねじは,適切な緩み止め(例えば,ばね座金,ロックワッシャ,ロックナット,ナイロンナット,ねじ緩み止め接着剤)を備えなければならない。ただし,ハブダイナモの取付けねじは除外する。また,ハブブレーキ及びディスクブレーキの組付けに使用する締結部品には,5.2.6.2のブレーキの耐熱性の規定を満たすものを備えなければならない。

ねじの強度

ハンドルバー,ハンドルステム,バーエンド,サドル及びシートポストを固定するねじは,製造業者が推奨する締付けトルク(範囲が示されている場合には,その最大値)の120 %で締め付けたときに破損してはならない。

折り畳み機構

自転車に折り畳み機構を装備するものにあっては,自転車を使用するときに簡単で安定した安全な方法で固定できるよう設計されており,かつ,折り畳んだときにケーブルをきずつけてはならない。
乗車走行中,固定装置が車輪又はタイヤに接触することがなく,かつ,折り畳み機構の固定が解除されてはならない。
クイックレリーズ装置を使用したフレーム体及びハンドルステムの折り畳み及び分割機構は,多重機構(2動作以上の操作で装置が解除される機構)によって不意にレバーなどの固定装置が解除されないような構造でなければならない。

ブレーキシステム

自転車は,前車輪及び後車輪のそれぞれを制動する別系統のブレーキを装備しなければならない。
これらのブレーキシステムは干渉されることなく独立して作動し,下表の制動性能の規定を満たさなければならない。
アスベストを含有するブレーキ部材を使用してはならない。
 条件 速度 使用ブレーキ 制動距離
乾燥時25 km/h 両方7 m以内
水ぬれ時25 km/h後だけ15 m以内
乾燥時16 km/h両方5 m以内
水ぬれ時16 km/h後だけ10 m以内
スポーティ車,シティ車,小径車,実用車 (幼児車も同じ)
普通自転車の点検整備基準では、
普通自転車の制動性能は、乾燥した平坦な舗装道路において、走行速度が10㎞/hのとき、制動操作を開始した場所から3m以内の距離で、円滑に停止させる性能を有することとされている。 
 
 

手動ブレーキ

a) ブレーキレバーの配置
 ブレーキレバーは,一般に前ブレーキ用をハンドルバーの右後ブレーキ用をハンドルバーの左に配置する。
b) ブレーキレバーの開き
 1) Aタイプのブレーキレバー(主にママチャリ系一般車、子供車に用いられているワイヤ駆動タイプ)
 乗員の指との接触を想定した部位内の,ブレーキレバーの外面とグリップとの間の寸法は、少なくとも40 mmの長さにわたって,
サドル最小高さが635 mm以上の自転車では90 mm以下,
サドル最小高さが635 mm未満の自転車では75 mm以下でなければならない。
なお,調整できるブレーキレバーは,当該寸法が得られるよう調整してもよい。
Bタイプ(ロッド駆動タイプ)も同様である。
 2) Cタイプのブレーキレバー(主にドロップハンドルに用いられているタイプ)
 省略
 c) ブレーキ及びワイヤの取付け
 製造業者の指示どおりに組み立てたとき,ブレーキワイヤ締付けねじがワイヤを切断してはならない。万一,ブレーキワイヤが切断したような場合でも,ブレーキ装置のどの部分も車輪の回転を妨げてはならない。
 d) ブレーキ摩擦材の固定
 ブレーキブロック,ブレーキライニングなどは,舟,ブレーキ帯などに確実に取り付けてあり,ブレーキ揺動試験を行ったときに,舟,ブレーキ帯などから外れたり,亀裂が生じたりしてはならない。
 e) ブレーキの調整機能
 ブレーキの調整機能は,次による。
 1) ブレーキは,ブレーキブロック,ブレーキライニングなどの摩耗,ワイヤの伸びなどが生じたときに,制動力を維持するため,調整ができる構造であり,かつ,摩擦材が定期交換時期又は摩耗による交換時期まで,工具を使用する又は使用しないに限らず適切な位置に調整できなければならない。
 2) ブレーキは,ブレーキブロック,ブレーキライニングなどと制動面との隙間が適切で,ブレーキレバーを握って操作したときに,ブレーキブロック,ブレーキライニングなどに著しい片当たりがあってはならない。
 3) ロッド式のブレーキを使用した自転車では,ハンドルの操縦角度を60°にとったとき,ブレーキブロック,ブレーキライニングなどが制動面と接触したり,後パイプ及び短棒に著しい曲がり,ねじれなどが生じたりしてはならない。
 

コースターハブ

コースタハブは,ギヤクランクを逆転したときに60°以内で制動が効き始め,正転したときは直ちに制動を解除しなければならない。 なお,クランク逆転角度は,任意のクランク位置からクランクに250 N以上のペダル踏力を加えて測定する。この力は,1分間保持しなければならない

自転車は,意図した用途及び使用予定者を考慮して安全で円滑に停止しなければならない。

a) 走路試験の場合,安全で円滑な停止とは,次のいずれの事態も引き起こすことなく要求される距離内
 で停止することをいう。
 1) 過度の激しい振動
 2) 前車輪のロック
 3) 自転車の横転(後車輪が制御不能でもち上がる。)
 4) 乗員による制御の喪失
 5) 制御を保持するため乗員が地面に足を着かざるを得ない過度の横滑り
 コースタハブは,更にコースタハブ直線性試験の直線性要件も満たさなければならない。
 b) 試験機による試験の場合・・省略

水ぬれ時と乾燥時との制動性能の比率

水ぬれ時及び乾燥時両方の制動の安全性を保証するため,制動性能比率は,水ぬれ時が乾燥時の40 %以上でなければならない。

操だ(舵)安定性

 a) 操だ(舵)回転部には,きしみ,当たりなどの不円滑及び著しいがたつきがあってはならない。
 b) サドルを最後方位置にし,適応乗員体重1) の±5 kgの乗員がその最後方部に座乗して,両手でハンド
 ルグリップ部をつかんだときに,自転車及び乗員の合計質量の25 %以上が前車輪にかからなければならない。
 c) サドル最大高さとなるよう固定したサドルに乗員が座乗して,最小目盛値が1°以下の角度測定器によって左右の操だ(舵)角度を測定したとき,操だ(舵)角度は左右それぞれ60°以上でなければな
 らない。

ハンドル

・ハンドル(グリップなどを含む。)の全幅は350 mm以上600 mm以下とする。
・ハンドルステムのホークステムへの最小はめ合い長さを表す,はめ合せ限界標識を付けなければならない。
・はめ合せ限界標識は,ステム径以上の長さの容易に消えない方法で表示し,ハンドルステムの下端からステム径の2.5倍以上の位置で,かつ,ステムの完全円周部の下端からステム径以上の長さがなければならない。・・正確に覚えること
・ハンドルをはめ合せ限界標識まで引き上げ,サドルを製造業者が指定するサドル最小高さまで下げたときに,グリップの最上部からサドル座面がシートポスト軸と交差する点までの垂直距離は400 mmを超えてはならない。
・ハンドルバーの両端は,グリップ,エンドキャップなどで覆わなければならない。
・ハンドルステムの取付け部上端とホークステム延長部分が取り付けられているホークステムの上端との距離gが5 mm以下で,かつ,操だ(舵)装置が適正に調整できなければならない。また,ホークステム延長部分がクランプされているホークステムの上部は,ねじを切ってはならない。
(その他省略)
ハンドルのはめ合せ限界標識は、シートポストとは基準が異なるので(シートポストは経の2倍以上の位置)ので混同しないように注意が必要

前照灯

a) 自転車には,JIS C 9502の性能をもつ前照灯を備えなければならない。
b) 自転車に尾灯を装備するものにあっては,尾灯の性能はJIS C 9502による。
c) 電気コードを使用した自転車は,鋭い縁との接触による損傷を避ける位置に配線しなければならない。また,電気コードの接続部は,各方向に対し10 Nの引張力に耐えなければならない。

取扱説明書

自転車には,次に示す主旨の取扱い上の注意事項を明示した取扱説明書を添付する。その製品に該当しない事項は記載しなくてもよい。組立説明書は販売店用とする。なお,取扱説明書には,一般使用者が容易に理解できるように図で明示したり,特に注意を必要とする事項については字を大きくしたり,色別にしたりすることなどを行って,強調することが望ましい。
a) 取扱説明書を読み,読んだ後,保管する旨。
子供が使用する自転車では,保護者は取扱説明書を必ず読み,使用上の注意事項を子供に指導する。
b) 使用に当たっては,交通法規を遵守する旨。
 ・夜間道路を走行するとき及びトンネル内を走行するときには前照灯を点灯する
 ・停止中の自動車のドアが開くことに対する注意・
 ・歩行者に危害を及ぼすおそれがある突出物の装着の禁止
 ・走行中の携帯電話の使用禁止及び二人乗りの禁止
c) 自転車が意図している用途(その自転車の走行に適している地形のタイプ)又は車種,及び不適切な使用をしたときの危険に関する警告。
 ・危険な乗り方
 ・自転車を踏み台代わりに使用することなど
d) 荷物積載時の注意及び警告
 1) 積載する荷物の重さ及び大きさの限度
 2) ブレーキ性能試験で製造業者が指定するテスト車への負荷(自転車の質量,乗員体重及び積載する荷物の質量との合計)が100 kg(子供車は60 kg)を超える場合は,許容積載質量(乗員体重及び積載する荷物の質量との合計)及び最大総質量(自転車の質量,乗員体重及び積載する荷物の質量との合計)を記載する。
 3) リヤキャリヤの取付けの可否及び適合するリヤキャリヤの質量別クラスの表示
 4) シート止めリヤキャリヤを取り付ける場合には,シートピン本体の長さが短いと確実に固定できず危険なため,必要に応じてシートピン本体を適切な長さのものに交換する旨の注意
 5) キャリヤ及びバスケットの使用上の注意並びに許容積載質量を遵守する旨の警告
 6) 荷物の運搬にキャリヤ及びバスケット以外は使用してはならない旨の注意
 7) 重い荷物を積載すると自転車の安定性を損なう傾向がある旨の警告
e) 幼児用座席の取付け及び幼児同乗時の注意
 1) 幼児用座席の取付けの可否及び適合するリヤキャリヤの質量別クラス
 2) 幼児用座席を取り付ける場合は,自転車,リヤキャリヤ及び幼児用座席の取扱説明書の指示に従う旨,また,幼児用座席の質量とその幼児用座席が指定する最大適用体重との合計が,リヤキャリヤの最大積載質量以下でなければならない旨の警告。
 3) 一本スタンドを備えた自転車では,幼児用座席を取り付けてはならない旨の注意
 4) 幼児用座席に幼児を乗せる場合は,幼児用座席の使用上の注意事項に従う旨,また,幼児の体重は,幼児用座席が指定する最大適用体重以下であることを確認する旨の警告。
 5) 同乗させる幼児に,幼児用ヘルメットを必ず着用させるなど幼児を乗せるときの注意
 6) 幼児を乗せたまま駐輪してはならない旨の注意
f)乗車前の準備及び注意
 1) 適応乗員の身長,体重,股下寸法などの体格
 2) サドル及びハンドルバーの高さの調整方法,特に,はめ合せ限界標識を越えて調整しないことの注意
 3) 車輪が異常ロックする場合の注意
 4) 前後ブレーキが左右いずれのレバーで作動するか,又はブレーキモジュレーターの存在(機能及び調整方法)及びコースタブレーキの使用方法
 5) サドル最小高さの表示及び測定方法
 6) 通常の使用時の巻込みの具体的な危険性に関する注意。これは,走行中に衣服の裾などがチェーンに巻込まれないようにするなどを含む。
 7) 自転車を調整が不完全なまま使用したり,自転車の転倒によって,部品が破損し,走行に支障を来す旨の注意
g) 乗車直前の確認事項
 1) 前ブレーキ及び後ブレーキの作動
 2) 前車輪及び後車輪の固定(クイックレリーズハブを含む。)
 3) タイヤの空気圧
 4) ハンドル,前ホーク及びサドルの固定
 5) ディレーラハンガの曲がり
h) 安全な乗車走行のための助言
 ヘルメットの着用。これは,児童が自転車に乗車するときには,必ず自転車用ヘルメットを着用させる旨を,また,児童以外が自転車に乗車するときにも,自転車用ヘルメットの着用を推奨する旨を記載する。
i)ブレーキのかけ方及び注意
 1) 雨天時には制動距離が長くなることに対する注意
 2) 前ブレーキを強くかけると,車輪がロックし自転車が前方に転倒するおそれがあることに対する注意
j)夜間の使用における注意
 1) 前照灯及び尾灯の点灯の確認
 2) リフレックスリフレクタが破損したり,汚れたりしたままで使用しない旨の注意
k) 雨天,雪及び強風時の使用における注意
l)自転車部品及び装置の取付け及び調整方法
 1) クイックレリーズ装置の使い方。これは,車輪の着脱,クイックレリーズ装置の固定力の調整方法などを含む。
 2) チェンジギヤ装置の使い方
 3) サスペンション機構を装備している場合は,その調整方法
 4) 足固定装置を装備している場合は,安全な使用方法及び調整方法
 5) ハンドルバー,ハンドルステム,バーエンド,サドル,シートポスト,車輪及びエアロエクステンションの取付方法及びねじの推奨締付けトルク
 6) 組み付けられずに供給された部品の適切な取付方法
 7) 適正なチェーンの張り及びその調整方法
 8) 折り畳み又は分割の方法及び注意
m) 点検方法,調整の時期など。
 1) ブレーキ,タイヤ空気圧,操だ(舵)装置及びリムの定期点検方法
 2) 変形部品は,即時に交換しなければならない旨の警告
 3) ブレーキレバーの遊びが大きいものは,ブレーキが効かなくなることがあり危険であるので,すぐに販売店で点検を受ける旨の注意
 4) チェーンのたるみが大きくなると,走行時にチェーンが外れやすくなり危険であるので,すぐに販売店で調整を受ける旨の注意
 5) 使用開始後2か月以内に,販売店で点検を受ける旨
 6) 1年ごと及び異常を感じた場合は,販売店で点検を受ける旨
 7) ブレーキワイヤ及びブレーキブロックの交換時期
 8) 注油(潤滑材を含む。)の箇所,頻度及び推奨する油。特に,注油箇所は図などで示す。ブレーキ制動面に注油しない旨の注意。
n) タイヤの標準空気圧又は最大空気圧:○○ kPa。これは,タイヤのサイドウォール部に表示空気圧が表示されている旨の説明でもよい。なお,リムに推奨する最大空気圧が表示されている場合は,タイヤ(チューブラタイヤを含む。)及びリムのいずれか最大空気圧の小さい方の圧力に従う旨の注意
o) リムの手入れ及びリムの摩耗の危険に関する明確な説明
使用者から見えないところで摩耗損傷を起こし得る繊維強化樹脂製リムは,リムの摩耗が起き得ること,使用者が摩耗の度合いを判断する方法を説明し,繊維強化樹脂製リムの検査のため,購入店で点検を受けた後に製造業者に返送することを推奨する旨を記載する。
p) チューブラタイヤを装備している場合は,チューブラタイヤの正しい接着方法
q) 再帰反射環をサイドリフレクタとして使用しているタイヤを交換するときの注意
r) 交換部品など。
 1) 標準予備部品。これは,部品交換上の注意,適切なタイヤ,チューブ,ブレーキ摩擦材などを含む。
 2) 安全上重要な部品については,純正の交換部品だけを使用することの重要性
 3) アクセサリ。これは,適切なものが用意されている場合は,その操作方法,点検方法,適切な交換部品(電球など)などを含む。
s)激しい使用による破損の可能性に対して乗員の注意を促し,かつ,フレーム体,前ホーク,(該当すれば)サスペンション接合部,(該当すれば)繊維強化樹脂製部品の定期点検を推奨する旨の注意
t)繊維強化樹脂製部品を使用している場合は,繊維強化樹脂材料を高温の環境に置くことの悪影響に注意を払うようにとの助言
 u) 駐輪時の注意。これは,自転車の放置に関する注意を含む。
 v) 保管上の注意事項
 w) 廃棄に関する情報
 x) 使用者のための相談窓口の所在地,電話番号及びファックス番号
 y) その他必要な注意事項。対人対物賠償保険に加入するよう記載することが望ましい。また,製造業者の判断で,その他の関連情報を含めてもよい。

商品選択上の情報

自転車には,消費者が使用する目的に合致した商品を選択できるように,スポーティ車,シティ車,小径車,実用車又は子供車の車種,諸元,機能,性能などを記載したカードなどを見やすい箇所に添付する。マウンテンバイク類形車は,外観上似ているがマウンテンバイクではない旨を消費者に誤解のないように記載する。

シートポストのはめ合せ限界標識

 a) シートポストには,フレームとの最小はめ合い長さを表す,はめ合せ限界標識を付けなければならない。はめ合せ限界標識は,ポスト径以上の長さの容易に消えない方法で表示する。円形断面の場合,シートポストの下端からポスト径の2倍以上の位置にあり断面が円形でない場合は,シートポストの下端(断面が最大になる箇所)から65 mm以上の位置になければならない。
 b) a)に規定した最小はめ合い長さが確保できる構造(例えば,フレームからの引き抜きを防止できる止め具が組み込まれ,かつ,意図せずに抜けない構造)でなければならない。

ペダル踏面

a) トウクリップなどを用いないペダルは,踏面が上下両面にあるか,又は踏面が自動的に上面になる構造(片面式ペダルという。)でなければならない。
b) 踏面は,ペダルと一体になっているか,又はペダル体に確実に組み込まれていなければならない。
c) 足固定装置付きペダル(ビンディングペダル,トウクリップなど)には,踏面がなくてもよい。
d) 回転は円滑でなければならない。

ペダルクリアランス

 a) ペダル接地角 ペダル接地角は,25°(子供車では23°)以上でなければならない。
ただし,サスペンション機構を装備している自転車は,サスペンションを最も軟らかくなるよう調整し,80 kg(子供車は40 kg)の乗員が乗車した状態で測定する。
 b) トウクリアランス 自転車は,ペダルと前タイヤ又はどろよけとの間に下表の値以上のトウクリアランスがなければならない。
このトウクリアランスは,いずれか一方のペダルの中心から前タイヤ又はどろよけが描く弧のいずれかクリアランスが最小となる弧までを,自転車の基準中心面と平行で前方向に測定する。
スポーティ車,シティ車,小径車,実用車幼児車
足固定装置がないもの10089
足固定装置があるもの8989
トウクリアランス 単位:mm

ハンドル

自転車のハンドルは,ハンドルバーとハンドルステム(一体形のものを含む。)とによって構成され,次による。
a) ハンドル(グリップなどを含む。)の全幅は,350 mm以上600 mm以下とする。
b) ハンドルステムは,ホークステムへの安全なはめ合い長さを確保するため,次の1)又は2)による。
1) ハンドルステムのホークステムへの最小はめ合い長さを表す,はめ合せ限界標識を付けなければならない。はめ合せ限界標識は,ステム径以上の長さの容易に消えない方法で表示し,ハンドルステムの下端からステム径の2.5倍以上の位置で,かつ,ステムの完全円周部の下端からステム径以上の長さがなければならない。
 2) 1)に規定した最小はめ合い長さが確保できる構造(例えば,ホークステムからの引き抜きを防止できる止め具が組み込まれ,かつ,意図せずに抜けない構造)でなければならない。
 c) ハンドルステムは,そのはめ合せ限界標識がヘッド部品の一番上を越えない高さとなるように,ホークステムに固定しなければならない。
 d) ハンドルをはめ合せ限界標識まで引き上げ,サドルを製造業者が指定するサドル最小高さまで下げたときに,グリップの最上部からサドル座面がシートポスト軸と交差する点までの垂直距離は,400 mmを超えてはならない。
 e) ハンドルバーの両端は,グリップ,エンドキャップなどで覆わなければならない。また,グリップ,エンドキャップなどは,低温試験及び温水試験を行ったとき,離脱力に耐えなければならない。
 f)ハンドルステムの取付け部上端とホークステム延長部分が取り付けられているホークステムの上端との距離gが5 mm以下で,かつ,操だ(舵)装置が適正に調整できなければならない。また,ホークステム延長部分がクランプされているホークステムの上部は,ねじを切ってはならない。
アルミ製及び繊維強化樹脂製ホークステムについては,ホークステムの内側面をきずつけるおそれのある内部装置(例えば,アンカーナット)は,避けることが望ましい。

車輪の縦振れ及び横振れ

リムを制動するブレーキ1 mm
リム以外を制動するブレーキ2 mm

タイヤクリアランス

タイヤとフレーム体,前ホーク,どろよけ又はその取付けねじとの間には,6 mm以上のクリアランスがなければならない。
フレーム体又は前ホークがサスペンション機構を装備している場合,クリアランスの値は,圧縮されていない状態で測定する。

スポーク張力

スポークを用いた前車輪及び後車輪のスポーク張力は,
車輪の径の呼び22を超えるものでは平均400 N以上,
車輪の径の呼び22以下のものでは平均300 N以上とする。
ただし,張力が150 N以下のスポークがあってはならない。
オフセット組の車輪では,フリーホイール側のスポーク張力は平均400 N以上,その反対側のスポーク張力は平均300 N以上とする。
前車輪及び後車輪のスポーク張力は,車輪の全てのスポークをスポーク張力計によって測定する。

車輪の保持

ハブナットの最低取外しトルク(緩めトルク) ハブナットの最低取外しトルクは,製造業者が推奨する締付けトルクの70 %以上でなければならない。
製造業者の推奨する締付けトルクが示されていない場合の締付けトルクは,前ハブナットが20 N・m後ハブナットが30 N・mとする。

 

前車輪の保持

自転車は,ハブナット又はクイックレリーズ装置が緩んで車輪が脱落しないように,前つめに前車輪を保持する二次的な車輪保持装置(車輪を保持する構造を含む。)を備えなければならない。

クイックレリーズ装

 自転車のハブ,フレームへのシートポストの固定,及び折り畳み機構に使用するクイックレリーズ装置は,次の一般的操作方式のものでなければならない。
 a) クイックレリーズ装置は,調節可能で,締付け条件が決定できなければならない。
 b) 形状及び表示によって,装置が解除又は固定のいずれの位置にあるかを,明確に識別できなければならない。
 c) カムレバーで調節するものは,正しく調節したレバーの先端から5mm所要固定操作力が200 Nを超えてはならない。この操作力を加えたとき,クイックレリーズ装置に永久変形がないものとする。
 d) 固定位置からの締付け解除操作力が50 Nを下回ってはならない。
 e) カムレバー操作のものでは,250 N以上の力で完全に閉じないように調節しておいて,その大きさの締付け操作力に耐え,破損又は永久変形があってはならない。
 

表示空気圧

タイヤのサイドウォール部には,タイヤを使用状態で装着したときに見やすい箇所に,容易に消えない 方法で,標準空気圧又は最大空気圧を表示しなければならない。リム製造業者が推奨する最大空気圧がある場合には,リムに容易に消えない方法で表示するとともに,取扱説明書に記載しなければならない。製造業者が推奨する最小空気圧も表示することが望ましい。

チェーン又は歯付きベルトの強度

 a) チェーン 推進力の伝達手段としてチェーン駆動を使用している場合,チェーンは著しいたるみ又は張りすぎがなく,作動が円滑でなければならない。必要に応じて,後ハブ軸部にチェーン引きを取り付ける。
 b) 歯付きベルト 推進力の伝達手段としてベルト駆動を使用している場合,歯付きベルトは拘束されることなく前後プーリ上で動作しなければならない。

シートポストのはめ合せ限界標識

a) シートポストには,フレームとの最小はめ合い長さを表す,はめ合せ限界標識を付けなければならない。はめ合せ限界標識は,ポスト径以上の長さの容易に消えない方法で表示する。円形断面の場合,シートポストの下端からポスト径の2倍以上の位置にあり,断面が円形でない場合は,シートポストの下端(断面が最大になる箇所)から65 mm以上の位置になければならない。
b) a)に規定した最小はめ合い長さが確保できる構造(例えば,フレームからの引き抜きを防止できる止め具が組み込まれ,かつ,意図せずに抜けない構造)でなければならない。

回転中の車輪の保護

 a) ブレーキワイヤが切断したときに,制動装置機構のどの部分も車輪の回転を急激に妨げることがあってはならない。
 b) 自転車にディレーラを装備するものにあっては,ディレーラの破損,調整不良などによってチェーンが脱落しても,車輪の回転が妨げられないようにスポークプロテクタなどを装備し,防護しなければならない。

フロントリフレクタ

1) フロントリフレクタの反射光の色は,白としなければならない。
2) フロントリフレクタの取付位置は,前車輪ハブ軸より上方で,前方からレンズの全面が確認できなければならない。 
3) フロントリフレクタの代わりに,夜間前方100 mの距離から自動車のヘッドライトなどの光に反射して容易に存在を確認できる反射体などを装着してもよい。

リヤリフレクタ

1) リヤリフレクタの反射光の色は,赤としなければならない。・・・道交法では「橙色または赤」と規定されているので、問題文に応じて解釈する。
2) リヤリフレクタは,レンズ最上部が後車輪ハブ軸よりも上方で,かつ,サドル座面中央部から75mm 以上下方の位置になければならない。
ただし,乗員の衣服,積載物などで隠されるおそれがない場合には,この規定は適用しない。
3) リヤリフレクタの光軸又は主光軸は,自転車の進行方向に対し平行で,上下左右に5°以上の傾きがあってはならない。
 なお,サスペンション機構をもつ自転車は,その自転車の適応乗員体重相当を負荷した状態で測定する。
4) リヤリフレクタに対し,使用時と同じ条件で最も影響があると思われる方向に90 N(どろよけに取り付けたものは50 N)の力を30秒間加えたとき,反射面の向きの変化は15°未満,力を除去した後の反射面の向きの変化は5°未満でなければならない。また,各部に破損その他の著しい欠点があってはならない。

ペダルリフレクタ

1) ペダルリフレクタの反射光の色は,黄としなければならない。
2) ペダルリフレクタは,ペダルの前面及び後面になければならない。
3) ペダルリフレクタのレンズ面は,ペダル体又はリフレクタケースの端面から十分にくぼんでいなければならない。

サイドリフレクタ

自転車には,両側面から反射光を確認できる2個のサイドリフレクタを,次によって取り付ける。
1) サイドリフレクタの反射部は,単色で,反射光の色は,白又は黄としなければならない。
2) サイドリフレクタは,自転車の前半部及び後半部に各1個以上取り付けなければならない。
3) サイドリフレクタは,自転車の側面又は車輪に装着しなければならない。再帰反射環を除いて,そのうち1個以上は車輪のスポークに取り付けなければならない。

警音装置

自転車には,ベル又はブザーを備えなければならない。その引き手,レバー又はスイッチは,走行中容易に操作できる位置になければならない。

附属装置

自転車に錠を装備するものにあっては,施錠及び開錠が円滑でなければならない。
a) 鍵付き錠は,鍵によってシリンダを回転又はシリンダを移動させて開錠する構造で,専用の鍵以外のもので容易に開錠してはならない。
b) 箱形錠を取り付けた自転車は,回り止め及びずり落ち防止装置を施さなければならない。なお,箱形錠は,他の錠と併用して使用し,単独では用いない。

リヤキャリヤに関する表示

シティ車には,リヤキャリヤ,どろよけ又はフレーム本体の見やすい箇所に,シールなどで次の事項を表示する。
 a) リヤキャリヤが取り付けられている自転車で,幼児用座席を取り付けることができるものには,幼児用座席の質量とその幼児用座席が指定する最大適用体重との合計質量(最大積載質量)を分かりやすく表示する。幼児用座席を取り付けることができないものには,その旨を表示する。
 b) リヤキャリヤが取り付けられていない自転車には,取り付けることができるリヤキャリヤの質量別クラスを表示する。

製品の表示

自転車には,立パイプの表面又はフレーム体の表面に,転写印刷,銘板,刻印又はシールを付ける方法で,次の事項を表示する。
 a) 製造業者名又はその略号
 b) 車体番号:車体番号は,通常,一連の通し番号とする。
許容積載質量(乗員体重と積載する荷物の質量との合計)をフレームの容易に見える場所に表示することが望ましい。
次に示す安全上重要な部品には,製造業者名及び部品番号などトレーサブルな識別情報を表示することが望ましい。
 1) 前ホーク
 2) ハンドルバー及びステム
 3) シートポスト
 4) ブレーキレバー,ブレーキブロック及び/又は舟
 5) ブレーキワイヤ
 6) 油圧ブレーキパイプ
 7) ディスクブレーキのキャリパ,ブレーキディスク及びブレーキパッド
 8) チェーン
 9) ペダル及びクランク
 10) クランク軸
 11) リム